【ホットV(ホットインサイドV)エンジンの熱害問題】

  1. メンテナンス
V8エンジンでのホットインサイドVレイアウト

 Vバンク内にターボチャージャーを押し込むいわゆる「ホットVエンジン(ホットインサイドVエンジン)」は、フェラーリが80年代にF1で採用したように昔からあるレイアウトです。しかし、市販車両への浸透は遅く、ガソリンエンジンに初めて採用されたのは2008年のBMWのN63エンジンでした。

 翌2009年にはこのV8エンジンをさらにMモデル用にチューンナップしたS63エンジンがX5MとX6Mに搭載されます。これは555馬力のツインターボエンジンですから、当時は露骨に熱害が心配されました。ただ、数年経っても熱害報告もなくどうやら大丈夫そうだとわかると、アウディやポルシェ、そしてメルセデスベンツもV8にホットインサイドV構造を採用し始めて今に至るのは皆さんもご存じの通りです。ベンツでの呼び名は「ホットインサイドV」、ポルシェでの呼び名は「センターターボレイアウト」となりますが、名前が違うだけで基本レイアウトは同じです。

BMW専門雑誌ですら排熱に疑問視する構造

 2009年当時はたとえばBMW専門誌ですら、デビューしたばかりのこのX5MとX6Mに対して正面から熱害の警鐘を鳴らしていました。

 曰く、「Vバンクの内側に排気バルブをセットして、流速を保った状態の排気を左右バンクの間に取りつけられたタービンに送り込む555psのツインターボユニット。1500回転から69.0kgmという、あきれるほどのトルクを生み出すエンジンは、さすがに熱害が心配だ。2つ並んだターボユニットの上にはヘッドカバーが取り付けられ、熱の逃げ道はないように思える。この手のMモデルはサービスフリーウェイがある間に楽しむのが正解かもしれない」と、V8でのホットVレイアウトに明らかに否定的な見解を示していました。

 まだ初代X5に乗っていた当時の私は気になってヤナセのサービスの方にうかがってみたのですが、「このレイアウトはベンツの昔のV6ディーゼルにも採用されていましたが、あれは水冷でしたし、詰めが甘かったです」「X5Mは一日中走っても大丈夫ですよ」と言われたので強く記憶に残っています。

 このサービスの方は自分が属するBMWについても駄目なところは駄目と言い過ぎるくらいの方で、たとえば6シリーズのグランクーペについて「何も見るべきところがないパッケージング」「あんな車が売れてるようじゃダメ」とこき下ろすような方だったので、本当によく覚えています。

9万キロ目前のホットVエンジン

 それから時を経て縁あってこの熱害が心配されていたX5Mに私は今乗っているわけですが、もうすぐ9万キロに届こうかというものの、確かに熱害問題は出ていません。
 長時間走行に関して言うなら、世田谷から大分県の九州自動車歴史館までの9時間を、各給油ストップの数分間以外はノンストップでしかも割と踏みちぎったりしながら走っても、何ら問題はありませんでした。
 これは考えてみると、実に不思議なことです。普段はほんの数分程度の走行であっても、エンジン停止後は鼻先で「ブォ~~ン」とファンが結構長く回り続けるほどの熱量なのに、不思議なものです。

 こないだ20分くらい平和な一般道を走っあとに試しに到着地ですぐボンネットを全開に立ち上げてそのまま30分くらいおしゃべりしてきて帰ってきたら、まだボンネット内から「もわ~~っ!!!」とまるで「ターンパイク上りを全開走行してきたばかりです」みたいな熱気が襲ってくるんですよね。この熱量を使って発電でもできないのかなと思うくらい、フルオープンにしたエンジンルームが猛暑なんです。本当にこれ大丈夫なのかなと改めて思うんですが、何となくまだ大丈夫なんですよね。不思議です。

予防整備をしておきたい

 この車は非常に気に入っているので長く乗りたいですし、熱由来の不具合が出るとわかっているなら予防整備をしておきたいのですが、前例がわからないので手立てがありません。しかも、カーセンサーやグーネットを見ていると、私より過走行なX5Mは見当たりません。ということは、熱害の不具合という先例は私が作ってしまう可能性が高いのかなと思いつつ、毎日楽しく乗っています。

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